開院8周年を迎えて
おかげさまで開院から8年を迎えました。開院間もない頃に未曾有のパンデミックに直面し、診療後の診察室で一人ぽつんと途方に暮れた日もありましたが、今となってはほろ苦い思い出です。最近は大方その荒波も乗り越え、無事この日を迎えることが出来ました。ひとえに通院して頂いている患者さんはもちろんのこと、近隣のクリニックの皆様、精密検査や入院が必要な時に手を差し伸べていただいている基幹病院の皆様を始め、その他大勢の方々のおかげと思い感謝に堪えません。またクリニックの成長のために、不断の努力を重ねてきたスタッフの皆さんの貢献も大です。
改めてお礼を申し上げます。
そもそも開業前は「関節リウマチ」や「膠原病」の専門医は開業に不向きではないか?との助言がありました。その当時、リウマチ科を標榜する内科系のクリニックは県内にも数えるほどしかなく、患者さんにとっての受け皿は、主に総合病院や大学病院が一般的だったと思います。あるいは意識の高いかかりつけ医の先生方が対応されていたと思います。リウマチ膠原病疾患は、とかく「不治の難病」のイメージが先行していて、病態も難解で治療理論も独特、生活習慣病などと比べ一般人口に対する患者数が少ないのも事実です。また、専門医の人数が少ないこともあって、リウマチ内科自体の存在感が希薄だったのも一因かと思います。
親切な先輩からは「開業する前に、畑違いでも良いから1つか2つ特技を増やしてから開業すべし」「クリニック名の〝リウマチ〟は逆に足を引っ張るのではないか?」とのアドバイスを頂いたことがあります。
ただ、自分自身大学病院で診療していた頃から、痛烈に「リウマチクリニック」の必要性を感じていた事もあり、いずれリウマチクリニックへのニーズは高まり、必ずや日の目を見ることを確信していました。
大学病院のリウマチ膠原病内科医は激務です。開業前は私自身も病棟の管理、運営をこなしながら、朝8時から外来を開始して、50名ほどの患者さんに対応していました。その中には当然軽症の患者さんも居られれば、それこそ「生き死」に関わる患者さんも居られ、気が付けば外来終了が20時を過ぎていたということも珍しくありませんでした。待ち時間も時には4-5時間ということもざらでした。その当時、負担をお掛けした患者さんには大変申し訳なく、今となっては顔から火が出る思いです。ではそのような待ち時間に見合った内容の診療であったかといえば、振り返るとお世辞にもそうは言い難い状況だったと思います。重症な患者さんに注力するあまり、
患者さんにとってアクセスしやすく、より細やかな対応はクリニックならではの特性であり、大病院では叶えられない利点だという思いがありました。自身のクリニックでそれが実現できれば、という思いは40代に差し掛かった頃から芽生え始めていましたが、その当時大学病院は慢性的な人手不足の折、自分自身も組織内の「長」を任される立場になり、振り返ってみれば開業に漕ぎつけるまでおおよそ5年の年月を要しました。
リウマチ膠原病内科は、「内視鏡」や「外科処置」の様な華々しい手技こそ少ない診療科です。一方で、患者さんの様々な臨床情報(現病歴、既往歴、家族歴、生活歴)や、「視る、聴く、触る」を基本とした身体診察、採血検査やレントゲン所見などの追加情報を参考に、最終的には自身の知識、過去の経験、類似の症例の検索などを通じて正しい診断に導く事が日々の業務です。そのプロセスは最も「内科らしい内科」と言えるかもしれません。同じ病名でも、病気の現れ方は千差万別、医師になって約29年ですがその奥の深さは依然として色褪せませ
またごく稀ではありますが、一瞬のインスピレーション(?)が働き、患者さんの所見を一瞥しただけで診断に至る例もあり、長年同じ事を愚直に繰り返してきたことに対する一種の「賜物」ではないかと思うこともあります。
また、治療に関する進歩には、目に見張るものがあります。特に関節リウマチの治療における約30年間のパラダイムシフトはどの内科の領域に比べても突出していて、しかもクリニックでも実施可能なレベルに収束しています。その様な状況に呼応するように、全国的にリウマチ内科を標榜するクリニックが年々増加しており、一種感慨深いものがあります。
この8年間を振り返り自身の専門性を活かし、それが少しでも患者さんの病状改善につながることに無上の喜びを感じる今日この頃です。特に難解な病態が紐解けた時、患者さんが快方に向かう場面を目の当たりにした時、その結果として過分な感謝の言葉を患者さんやご家族から頂けることが、自分にとって何よりの活力の源となっています。一方で、患者さんの病状が思わしくない時や、クリニックでの医療の限界を感じる場面が無い訳ではありません。そのような悲喜こもごもも、この職業でなければ味わえない醍醐味だと思います
クリニックを運営する中で、責任者であるがゆえの葛藤、悲哀も枚挙に暇がありません。ただ、そのストレスを跳ね返すに余りあるほど、毎日の仕事(診療)は総じて楽しく、やりがいがあります。
所信表明のような文面となりましたが、今後も「街の専門医」として謙虚に、真面目に自身の分をわきまえ、少しでもこの地域の医療に貢献できればと思います。引き続き宜しくお願いいたします。
開院8周年の日に
白岩秀隆
