べーチェット病
ベーチェット病とは?
ベーチェット病(Behçet's disease: 以下BD)はトルコの皮膚科医ベーチェット(Hulusi Behçet)によって1937年に提唱された全身の炎症性疾患です。発信地のトルコを中心に日本、中国などの東アジア、中近東、地中海沿岸諸国に多い疾患で、別名〝シルクロード病〟とも言われています。日本は世界有数のBD多発地域で、国内でも特に北海道、東北に患者さんが偏在し北高南低の傾向があります。また、特有の白血球表面抗原(HLAーB51やA26)を保有する患者さんが一定数存在し、この病気の遺伝素因が指摘されています。
※国が定める指定難病です。
BDの臨床症状
■主症状(4大症状)
①口腔内潰瘍:BDの患者さんのほぼ全例に認める症状です。再発性でアフタ様(表面が白く浅い潰瘍)と表現されます。有痛性で唇や舌、頬の粘膜、歯肉部にも生じます。
②皮膚症状:代表的な皮膚所見が結節性紅斑です。赤いしこりの様な有痛性の皮疹です。特に下腿(すね)に多発します。そのほかにも毛嚢炎様皮疹(にきびの様な皮疹)や血栓性静脈炎(血管に沿った痛み)なども特異的です。
③眼症状:眼球は何層かの膜が重なるように存在し、そのうち眼球の前方にある虹彩毛様体と後方にある網脈絡膜を併せて「ぶどう膜」と総称しますが、BDはその部分に炎症を起こします。視力低下や失明のリスクもあり、眼科医との連携が必須です。後述する薬剤(生物学的製剤:インフリキシマブ)などの治療の選択肢が広がりを見せています。
④外陰部潰瘍:男女ともに生じ、口腔内潰瘍同様に初発の症状として多い傾向です。局所の痛みのため時には歩行障害を生じる事もあります。女性の場合月経などの周期に一致して増悪することもあるようです。
■副症状
①関節炎:患者さんの半数以上に認めます。比較的大きな関節(膝)が障害されることが多く、小関節が中心の関節リウマチとは幾分異なった経過を示し、関節の変形を認めることもまれです。
②精巣上体炎(副睾丸炎):患者さんの約5%に生じると言われています。
③消化器病変:回盲部(盲腸の付近:右の下腹部)に潰瘍が出現します。症状としては右の下腹部痛、下血、下痢など。穿孔する場合もあります。
④血管病変:静脈、動脈いずれにも病変を生じます。静脈では深部静脈血栓症(下肢の血管に血栓がつまる)、動脈では血管の閉塞や動脈瘤を来します。
⑤中枢神経病変:脳炎や髄膜炎などの急性期の症状や慢性進行性の精神症状、認知症状を来す場合があります。
■BDの特殊病型
①神経ベーチェット
②腸管ベーチェット
③血管ベーチェット
※診断する上で参考となる所見として針反応(一定の太さの注射針で皮膚を刺した後、48時間後に刺入部近くに特有の皮疹が生じる現象)が有名です。BDの患者さんは「かみそり負け」「採血後の皮膚のトラブル」が多い印象があります。