多発性筋炎・皮膚筋炎
皮膚筋炎・多発性筋炎とは?
多発性筋炎(Polymyositis:PM)、皮膚筋炎(Dermatomyaositis:DM)は自己免疫現象によって、体幹部(背中や腰など)や上肢・下肢の近位筋(上腕や太ももなど胴体に近い筋)に炎症を来すリウマチ膠原病疾患です。炎症によって筋組織が障害されると筋の萎縮や筋力低下が引き起こされます。また例外も有りますが血液検査では筋障害に関連した検査(クレアチンキナーゼ、アルドラーゼ、ミオグロビン)が上昇します。皮膚筋炎は筋の障害に加えてさらに特有の皮膚症状を伴った病型です。多発性筋炎に皮膚症状が加わったものが皮膚筋炎というわけではなく、両者は病態生理的にも臨床的にも異なった特徴を有し、別個の疾患と考えられています。両者とも悪性疾患の合併率が他のリウマチ膠原病疾患に比べて高く、特に皮膚筋炎の場合、約3割に悪性疾患を合併すると言われています。治療はステロイドが中心ですが、その他免疫抑制薬が使用されます。
最近の解析の結果、多発性筋炎、皮膚筋炎は単一な疾患ではなく、少なくとも十数種類の異なった自己抗体が検出されていて、各々異なった臨床的な特徴に区別されることが解ってきました。
※国が定める指定難病です。
皮膚筋炎に特徴的な皮疹としては
①ヘリオトロープ疹:両側の上眼瞼(上まぶた)が少し腫れぼったく、赤紫色の紅斑を伴う。
※ヘリオトロープは植物の名前
②ゴットロン徴候:手指、肘、膝に一致して落屑(擦るとぽろぽろと剥がれる)を伴った紅斑
③ショールサイン:後頚部から両肩に広がる紅斑
④Vネックサイン:襟元のV字型の紅斑
⑤メカニックハンズ(機械工の手):指先や親指から人差し指にかけてのざらざらとした皮疹
⑥爪病変:爪上皮の出血点 爪上皮の延長
重大な臓器合併症・・・間質性肺炎
多発性筋炎、皮膚筋炎とも一定の割合で間質性肺炎が合併することが解っており、特に抗MDA5抗体という自己抗体が陽性の皮膚筋炎は高率に間質性肺炎を合併し、急速進行性の呼吸障害を来すため迅速な治療介入が必要です。
皮膚筋炎・多発性筋炎と悪性腫瘍との関係
皮膚筋炎・多発性筋炎発症時、約10%の患者さんに悪性疾患の合併が見られます(腫瘍随伴症候群)。また発症後しばらくして発覚する例もあります。特に抗TIF1-γ抗体という自己抗体が陽性の患者さんは悪性腫瘍の発症率が高く〝血眼になって〟のチェックが必要です。過去に皮膚筋炎とともに卵巣癌が見つかり癌の切除によって皮膚筋炎も治癒した患者さんの経験があります。